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【鑑賞レポート】「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の舞台挨拶がとにかく最高だった話

10月31日(土)に行われた「『劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン』大ヒット感謝舞台挨拶@MOVIX京都」を、ライブビューイングで見てきました。9時からの回と12時半からの回があり、私が見たのは9時からの回です。

今回の舞台挨拶には、キャストや監督だけでなく音響監督も登壇されましたが、これはかなり珍しい機会のようですね。スタッフ視点での制作のお話をたくさんうかがえるのではないかということで、開催情報が発表されてからずっと楽しみにしていました。

そして実際に見てみたら期待をはるかに超える充実の内容で、「こんなに素敵なお話をたくさん聞かせていただいてよいのでしょうか?映画のチケット代しか払っていないのですが、もっとお支払いするべきでしょうか?」と心配になってきたのですが、せめて私にできることして、今後も上映期間においては劇場に見に行って、Blu-rayの販売が決定したら即予約しようと決意した次第です。

当日のお話は、可能な限りメモを取りました。(職業柄、取材をしたり議事録を作ったりする機会が多いのですが、まさかその技術がここで生かされるとは思いませんでした……)

以下、私の感想を交えつつ、舞台挨拶を見ていない方でもなるべく雰囲気が分かるように整えました。この感動を同じファンの方々と共有できるとうれしいです。


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舞台挨拶の司会(斎藤滋プロデューサー)の掛け声とともに劇場版主題歌の『WILL』が流れ、登壇者(石立太一監督、鶴岡陽太音響監督、石川由依さん、浪川大輔さん)が入場。石川さんの衣装が、ボウタイブラウスに大きなフリルがあしらわれたロングスカートで、ヴァイオレットちゃんみたいでとてもお似合いでした。

最初に、劇場版の観客動員数が110万人、興行収入が16億円を突破(2020年10月31日現在)という、うれしいニュースが!この舞台挨拶で初出しの情報とのことです。

舞台挨拶1つ目のトピックは、このような大ヒットを受けて、今の気持ちやお客さんに伝えたいことというもので、浪川さん、石川さん、鶴岡音響監督、石立監督の順でお話しされました。

このトピックでは、私は石立監督のお話しが特に印象的でした。

石立:僕は、京都アニメーションという会社に所属して日々アニメーションの制作をしていますが、会場のMOVIX京都さんは、今作に限らず京都アニメーションがずっとお世話になっている劇場です。こういった縁のある場所でこうして挨拶できるというのは、本当にうれしく、ありがたいことだと思っています。同時に、責任も感じていて、公開されてお客様に届けられた時点で、その作品は見てくださった方の一人ひとりの身になると思うので、これだけ多くの方に観ていただいている分、責任も大きく重くなっていっているなと思います。

地元とのつながりを大切にしながらアニメを作り続けるという京アニの精神を強く感じるとともに、たくさんの人の目に触れるものを作るという仕事について考えさせられました。

石立監督は、お話の最後に「(責任の重さにこの場から)早く逃げたい気持ちもあります(笑)」とおっしゃっていて、冗談めかしていらっしゃいましたが、相当なプレッシャーがあったのだろうなあと思います。


2つ目のトピックは、キャストの2人が鶴岡音響監督から言われて印象深かったことというもので、鶴岡音響監督の仕事やキャストとの強い信頼関係が垣間見える内容でした。

浪川:鶴岡さんの演出……というか、ダメ出しなんですけど(笑)「ここは明るく」とか「ここはもうちょっと落ち着いた感じで」とかではなく、「言わんとしていることは分かるよな?」という伝え方なんですよね。だから、それを感じて理解しなければというプレッシャーが半端ないんです。鶴岡さんご自身はニコニコしていて、ご自身では気付いていらっしゃらないかもしれませんが、ものすごい圧があるんですよね。

鶴岡:今回は、最終回だから「分かるよな?」ではなくて「分かっているよな?」だよ。(ギルベルトはこれまで他のキャラクターよりも登場頻度が少ないので)浪川さんはちょっと不利ですけど。だからいつになく丁寧にやったよ。

浪川:そうですね……って、分かりますか?この感じです(笑)ヴァイオレットちゃんは、特に気持ちの変化を表現するのが難しいキャラクターですけど、石川さんはそれを演じるうえでどうでしたか?

石川:鶴岡さんが役者のやりたいことを尊重してくださるってことは、すごく感じていますね。最後の(ギルベルトと再会する)シーンとかも、「石川が思ったヴァイオレットがヴァイオレットだから好きにやって」みたいな感じです。

鶴岡:今回は本当に最終回だから、もうヴァイオレットに関しては多分何も指示していないと思うよ。今のパフォーマンスをそのまま出してくれればよかった。だから「ここのシーンは音楽も効果音も付けないから、お前たちの芝居しか聞こえないから頼むぞ」って言いました。

「丸投げされることと信頼して任されることの違い、これなんだよな~~~!!!」と、アラサー会社員の心にぶっ刺さってしまいました。自分よりもずっと長くこの仕事に関わっている人から、「石川が思ったヴァイオレットがヴァイオレットだから好きにやって」的なことを言われたらうれしいし、すごく追い込まれるけど頑張ろうって思いますよね。

さらに、このあとの鶴岡音響監督の言葉がとても素敵でした。

鶴岡:最初はやっぱり「石川由依がヴァイオレットを演じている」だったんですけど、回を重ねて、最終回には「ヴァイオレットが石川由依」でした。そういうところにたどり着くのは、一つの目標かなと思っています。

「ヴァイオレットが石川由依」、キャラクターに命を吹き込むとはどういうことかを一言で表す至言ですね。アラサー会社員モードからアニメファンモードに一瞬で切り替わりました。

鶴岡音響監督の仕事については、この後も何度か話題になっていて、例えば、浪川さんに「お前(ギルベルト)の声はヴァイオレットに届いたのか?」と確認をしたという話がありました。物理的な声の大きさではなく気持ちが届いたのかという質問で、それに対して斎藤プロデューサーが「鶴岡さんの独特の引き出し方がそこにあって、役者が100%を出したかをちゃんと確認されるのがかっこいいと思います」とおっしゃっていて、「分かる……」としみじみ感じておりました。


3つ目のトピックは、鶴岡音響監督と石立監督が制作の過程で考えていたことについてです。舞台挨拶や雑誌のインタビューを見ると毎回感じるのですが、いわゆる売れっ子であるほど謙虚なんですよね。でも、控えめな言葉の中に仕事へのプライドが見えるときがあって、そういう「静かな熱さ」がとにかくかっこいいなあと、いつも思っています。

斎藤:鶴岡さんと一緒に音楽に関するインタビューを受けたときに、「ヴァイオレット・エヴァ―ガーデンは、劇伴を手掛けるEvan Callさんにとっては始まりで、自分にとっては集大成」とおっしゃっていて、それくらいの心意気で臨んでいたということを知ったんです。鶴岡さん、その辺りの心境をお聞かせいただけますか?

鶴岡:Evanは若い作曲家で、ヴァイオレットを始まりにどんどん評価も高まって、大きく花開いていくと思う。僕はキャリアの最終盤に差し掛かったときに、こういう作品に巡り合えて、関わらせていただいた。当たり前のことを当たり前にちゃんとやるという「スタンダード」が、この作品でできた。自分の職業的な役割としての、一つの集大成だったのではないかと。おそらく、こういう(クリエイトの)世界は、基本の上に積んでいくことで進歩があると思うので、偉そうになってしまうけど次の世代にさらに積んでいってもらうための一歩を踏めたのかなというのが率直な感想です。

斎藤:鶴岡さんは「スタンダード」とおっしゃいましたが、自分は、ヴァイオレットは古くならない作品だなと思っていて、例えば10年後、20年経っても常に同じ気持ちで見られるんじゃないかなと思います。石立さんは、制作の過程で、これ以上のものを作れないかもしれないと思った瞬間があったと聞きましたが、その辺りはいかがですか?

石立:今でこそ笑っていますけど、作っているときはずっと周りの方に迷惑をかけていたと思うんです。「この作品を、絶対に、少しでもいい作品にしなければいけない」って気を張っていました。僕だけじゃなくて、横にいるキャストの2人も、鶴岡さんも、この場にはいない多くのスタッフもそう思っていて、そういうみんなの気持ちが、一つの映画として形を成していることが本当にすごいと思うからこそ、同じようなことがもう一度できるかって言われたら、なかなか難しいなって思っているんです。だからと言って、もう作るのをやめるってことではないんですけど、それぐらいって意味です。何というか「頑張りました!」みたいな話なので、恥ずかしいんですけど……

斎藤:頑張ったからいいじゃないですか。

石立:はい、頑張りました!

頑張った石立監督に、会場一同が拍手!本当は「ブラボー!」と叫びたいところでしたが、我慢してその分強めに手を叩きました。こんなに素敵な作品を見せてくださって、ただただ感謝です……


4つ目のトピックは、石川さんはがアフレコのあとに石立監督から言われてうれしかったことに関するお話でした。

石川:(石立監督から)「キャラクターが本当に生きているように感じた」と言っていただいたことが、すごくうれしかったです。

石立:お世辞抜きで本当にそう思ったんです。僕はこの作品を何回も見ていて、もちろんフィクションであることは分かっているんですけど、ヴァイオレットやギルベルトという人が本当にいて、人生をどのように過ごしてどのように帰結させていったのかを、本当に感じられるような気がしています。その形にしてくださっているのは、キャストさんたちのお芝居なんですよね。僕は、お芝居のテクニックの部分は全然分かりませんが、すごいなあと思います。

石川:私たちも「作品の絵に負けないように芝居しなきゃ」って思っています。みんなが同じところを一直線に目指していることが、この作品のよさだなと思いますね。

私は、演技の良し悪しについては全然分かりませんが、「ヴァイオレットやギルベルトという人が本当にいる気がする」という石立監督の言葉は、なんとなく分かる気がします。以前、「MBSアニメフェス」というイベントの生アフレココーナーで、石川さんが「進撃の巨人」のミカサを演じる様子を見たのですが、まっすぐ立って台本を読んでいるだけなのに、まるでミカサがそこで生きているかのように感じたことを思い出しました。

声優という職業は、近年はタレントのような位置づけで語られることも多くありますが、長く活躍されている方を見ると、やはり「職人」と称するのがふさわしい職業だなあと思いますね。


舞台挨拶の最後には、4人の登壇者が、お客さんへの感謝の言葉とともにご挨拶をされました。鶴岡音響監督、浪川さん、石川さん、石立監督の順にお話しされたのですが、特に石川さんの言葉が印象的でした。

石川:公開されてから本当にたくさんの人に観ていただいて、もう「ありがとう」の言葉では言い尽くせなくなっていたので、映像越しだったりもしますが、京都からこうして皆さんに直接感謝の気持ちを伝えることができて本当にうれしく思っています。「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、私は最初のイベントから登壇させていただいているんですけど、放送前だったのでホールが完全にお客さんで埋まるってわけでもなくて。そこから本当にじわじわじわじわと広がったというか、皆さんが周りに伝えてくださったおかげで大きな作品に成長していったのだと思います。今回の劇場版の一つのテーマとして、ヴァイオレットという人物が語り継がれ、みんなの心に残り続けているということがあると思うのですが、皆さんがたくさん映画を観てくださったことで、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という作品自体が皆さんの中に残り続けて、永遠に語り継がれていくものになるんじゃないかなと、私は思いました。皆さんがこの作品を見て、「周りにいる人に優しくしてみよう」とか「手紙を書いて思いを伝えてみよう」とか思っていただけると、すごくうれしいです。まだまだ上映をしていますので、ぜひ何回も見て思いを受け止めてください。本日は本当にありがとうございました。

石川さん以外のお三方も「皆さんが応援してくれたからここまで大きな作品になった」とおっしゃっていて、本当にファン冥利に尽きますね。と言いつつファンも、限りある時間だったりお金だったりをこの作品を楽しむことに使いたいと最初から自発的に思うのではなく、原作も脚本もキャラクターも作画も音楽も高いクオリティーのものを見せてもらえるから好きになるし、もっと見たいって思って応援するわけで、鶏(制作側)が先か卵(ファン)が先という話をするならば、今回はやはり鶏が先なのではないかと思います。
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舞台挨拶を見て、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という作品が大好きだと改めて思いました!劇場版はもちろん、テレビシリーズもまた見返したくなりますね。

それから、11月12日の「スタッフトーク付き上映会@MOVIX京都」も見に行きたかったなあ……ヴァイオレット以外の京アニ作品も大好きだから、今後のこういう機会に備えて、関西支社への異動希望を出すことを真剣に検討した方がいい気がしてきました……